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文才のない人間の書いたほぼ映画の感想のみの日記


by 44gyu
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イン・ザ・プール

公式サイト

伊良部総合病院の地下にある精神科の医師で、伊良部総合病院の跡取り息子・伊良部一郎を松尾スズキが演じ、オダギリジョー、市川実和子、田辺誠一がへんな病気に罹った患者を演じている。
原作未読。

思っていたよりはるかに面白かった。
先だって、同じ原作者で同じ伊良部一郎が主人のドラマ「空中ブランコ」を観ていたのだが、これがあんまり面白くなかったので心配していたのだった。伊良部一郎を阿部寛が演じていたのだが、伊良部はただの頭の弱い人みたいな描かれ方だった。またマユミちゃん役は釈由美子。

映画の松尾スズキ演じる伊良部は、ひょうひょうとした怪人物ぶりが、この人以外にありえないというくらい松尾にぴったりハマっていた。またそう思うわせる演技や演出がすごい。たぶん他の人が言ってたらなんでもないようなセリフも、松尾が言うとたちまち味がでておもしろくなってしまう。天才と言われるわけだよなあ、とつくづく思った。パッと見きたないヒゲヅラのおっさん(失礼)がこんなにカッコよく見えるなんて!
また松尾とは10年ぶりくらいの共演というふせえりが、出番はあまり多くないながら、とても強烈で印象深かった。市川実和子演じるルポライターが出入りする出版社の編集長役で、強迫神経症に陥ってしまった市川を辛抱強く導く。今ならふせえりが上司にしたい芸能人NO.1だ。
その他、オダギリジョ−、田辺誠一、市川実和子の病気ぶりも、深刻になりすぎず浅すぎず良かった。特に田辺の「プール依存症」は、あそこまでではないが同じプール好きとして、海ではなくプールの水の気持ちよさ、孤独感など共感出来るものが多くあった。岩松了、きたろうなどアクの強い演技も見ものだった。

一見地味ながら、観終わった後はかなりざわざわした(楽しい)気持ちになった。
音楽も熟考された感じの、出過ぎない選曲が心地よかった。

公式サイトの三木聡監督によるプロダクションノートを読んだら、これまた人柄が出ていそうな文章がおもしろくて、こういうテンションは共感できるのでなんかうれしかった。
# by 44gyu | 2005-06-17 23:05 | ★★★★

タナカヒロシのすべて

公式サイト
エイキサイト内サイト(鳥肌実インタビュー動画あり)


モッズ系猛禽類、自称鳥の調教師、鳥肌実主演の映画。マイナーどころで有名な主演者でありながら、脇はユンソナ、市川実和子・加賀まりこ・伊武雅刀などとけっこう豪華なメジャー系。
無気力で人とのコミュニケーションを取りたがらないかつら工場勤務の男の物語。

ユル〜い笑いとまったりした進行で、おかしみや感動がジワジワ染みてくる映画だった。細かい振動がブルブル続いているように、グフグフ笑いながら観ていた。意外な方向からおもしろさをぶつけられるのが快感だった。
ある意味アイドル映画だと思う。鳥肌実の端正な(人によっては気持ち悪い)顔のアップをまじまじと見られた感動にそう思った。鳥肌実の演技は、ややもすればいつも彼がネタにしている某学会の系列劇団と同じようなテンション系に陥ってしまうが、今回は「無気力」という役の設定が宜しかったようで、ほとんど暴走することなくクールな鳥肌が見られて良かった、と心底思った。モッズ系スーツ姿、(パン工場ではないが)工場勤務姿、ジャージ姿と、いろいろな格好の鳥肌を見られたのも良かった、と思う私はかなりミーハーなのかもしれない。
脇を固める俳優達も、皆クセのある人達ばかりで良かった。特に伊武雅刀の間の取り方というのは、信じられぬほど絶妙で良い感じだった。

以下ネタバレ






そんな感じでおもしろいな〜と思いながら観ていたが、なんかずっとひっかかるものがあった。ジワジワ系の映画らしく、そのひっかかりもジワジワ分かってきたのだが、それはタナカヒロシに向かって同じ職場の老人が言った「最近の若いのは〜」という言葉にあるようだった。
「タナカヒロシ」の無気力さ、テンションの低さは典型的な現代の若者像でもある。彼は他人に無頓着であったがゆえ不幸になり、その性根をたたき直すため、数々の不幸が彼を襲ったようにも見える。希薄な人間関係を思い直し、自分の感情を表現しはじめたことから、彼の不幸が遠のき、無表情だった顔面に笑顔がこぼれ出す。ラストのこのシーンはこの映画一番の感動シーンでもある。つまり、「もっと人と交わろう」というのがこの映画のメッセージのようだ。
・・・たぶん、私を含めてこの映画を鳥肌実目当てで観に来た大部分の人達にとって、このような爽やかなメッセージはあまり共感できるものではないような気がする。「爽やか」イコール胡散臭い、偽善者と思うひねくれたた根性の持ち主こそが、鳥肌実に興味を持つ人達であるからだ(私だけかもしれないが)。私自身「ウザい」「気持ち悪い」と思った。
なんか美味しい餌でつられて説教されたような、そんな後味だった。
# by 44gyu | 2005-06-15 21:54 | ★★★

高校四年

あらすじなど

題名だけ見ると、1年留年した高校生の自虐的な物語かと思われたが、高校3年生になった仲良しグループが、「常に皆より一歩先じていよう」という実に前向きな目標を掲げて称した自らのグループ名が「高校四年組」、というわけだった。
1957年の日活映画。まだ10代の小林旭が出演している。ひょろひょろしているがなかなかカッコイイ。

四年組のメンバーは、一風変わっているが明るく元気で優秀な者達ばかり、という設定で、個性的なキャラクターが続々登場する。
クラスの連中を相手に金貸しをして金利で儲け、放課後はバーでバイトをして、とにかく金をためることに情熱を注いでいる吉村、超高校級の野球投手でプロから引く手あまたの菅野、柔道の達人の熊木、学生妻の有吉などだ。
これらの面々を見ていると、高校生の皆がとても大人っぽいのに驚かされる(役者の顔形とかではなく、言動がだ)。ストーリーから各キャラクターが非現実的なのを考慮しても、各自が自分の考えを持ち、当たり前のように自分で判断し行動している姿は感心する。
たぶん今よりも「学生」と「社会人」の垣根が高くなく、学生に対して今ほど過保護でなかったからなのかもしれない。昔の学生がホントにこうだったのかは判らないが、少なくともこういう責任感のある学生を目指していたということがスゴイと思った。
しかしそれは「情報化社会」と呼ばれ出す前で、今よりも社会がシンプルだったというのもあるだろう。今の時代にこの映画のような朗らかな青春をあまり望めると思えないし、全面的に賛成もしないが、皆で詩を読みあったり、歌を歌ったり、古語まじりで嘆いたり意気込んだり、そんな青春も楽しそうだなと思う。
ちょっとびっくりしたのが「高校生妻」の話。27歳の男から、どうしてもと求められ在学中に結婚した女の子。皆より早く大人になった風だが、無邪気さは残り、かわいらしい若い新婚カップルの様子が描かれる。今でも16、7で結婚する女の子はいるだろうが、この映画の場合は周りの友達は皆乙女だし、本人も無邪気で幼さが残る少女なので、なんだか不思議な感じがした。この時代はまだこういう子がいたのだろうか。時代を感じて興味深かった。

そんな華々しい面子で構成されたグループに、病弱でなんの取り柄もないながら名前を連ねている自分を情けなく思っているのが主人公の枝村。彼は最初は「義母が義妹に踊りを習わせる金はあっても、僕が手術を受けるような金は家にない」(←このセリフは何回か出てくるのだが、なんかイイ!)し、自分には何の取り柄もないのでこのまま死んだっていいや、と捨て鉢になっていたが、美人の看護婦に信頼を寄せるようになり、生きたいと思うようになる。そして実の父親に手術の費用を出してくれと頼むのだが、完全に義母の尻に敷かれてしまっている父は息子の命を救うための金すら持ち出せない。そこで四年組の出番となる……のだが、うーん、命と習い事を天秤にかけるというのがすごい。鬼のような継母って今でもTVでお馴染みだけど、この映画の継母は最後まで顔が出ることはなく、それがかえって鬼ぶりに凄みを与えている。
枝村を助けられない無力な大人と、友情のために行動を起こす若者を対比させているが、枝村を助けるための金集めの方法が大雑把。菅野のプロ野球チーム契約料1千万円と、吉村の貯金100万円から捻出されることになる。話が大きい。
そんなこんなで枝村は手術を受けられるが、最後に大どんでん返しが待っている。

今観ても個性的で魅力的なキャラクター達が面白かった。大味だが、彼らに見習うところは多くある。昔の高校生の大人っぽさに驚いた映画だった。
# by 44gyu | 2005-06-09 20:46 | ★★★

ゴルゴ13(1973)

あらすじなど

オール海外ロケ、ゴルゴ13のモデルでもあった高倉健がゴルゴを演じ、高倉健以外は全員外国人俳優、脚本には原作者のさいとうたかお自身も参加している力の入れよう。
実際原作のマンガを読んだことのない私でも知っている、「握手はしない」「背後に回られるのを嫌がる」「支払いはスイス銀行」などのゴルゴエピソードが親切に入れられているのがうれしい。どれも、実演されるとかなりおもしろい。しゃべらないゴルゴのかわりに、クライアントがそういったゴルゴの決まりごとをいちいち説明してくれる、その後ろで挙動不振な動きをしているゴルゴが、なんかの別の生き物みたいで素敵。
実際原作のマンガを読んだことのない私だが、ゴルゴはもうちょっとカッコよかったりクールだったりするもんかと思っていた。しかし誘われて拒むことなく女の蒲団に入る上目使いや、案外敵にあっけなく捕まってしまうのなんてクールとは程遠いのでびっくりした。
昔の映画なのでいろいろ気になる所は沢山あるものの、一番気になったのは健さんの手指の綺麗さ。指先なんて白くて長いし、ゴツゴツしてなくてほっそりしている。「硬派」顔とのアンバランスが気になった。
# by 44GYU | 2005-06-07 23:58 | ★★★

リング2

公式サイト

ハリウッド版の2作目。「ハリウッド完全オリジナル・ストーリー」
1作目の話から6ヶ月後。シアトルから霧深いオレゴン州に越してきた母子。しかしサマラはどこまでも2人を追ってくる。

1作目は感覚的すぎて何が何だか全然わからなかった。
今回はホラーの怖さはあまりなかったが、前作よりおもしろかった。「アザーズ」みたいな感じかも。
しかし(貞子じゃなくなったところですでにそうだったのかもしれないけど)サマラはもうホラークイーンというか、ただのしつこい人。出てきた時の恐怖はほとんどなくなってしまい、ちょっと出過ぎだったのかもと思う。

以下ネタバレぎみ







全体を通じて描かれていたのはサマラの恐怖というよりも、母子の強い愛。サマラによって2人の生活が脅かされるのを、親子愛ではね除けるという話。しかし、この母子の絆は紙の入る隙間も無いほどガッチリで、それが美しいと感じる人もいるかもしれないが、個人的には気持ち悪くてこっちの方がホラーだと思った。
まず2人は、目覚めている間はサマラの監視の目を逃れられない、ということで、なんと夢の中で連絡を取り合う。ここでは魂で繋がった母子の絆が描かれているのだろう。
また、シングルマザーの出てくる映画ではよくある、母親の新しいロマンスも、この映画の親子の間には入り込めない。母親が新しい同僚の男と関係を築くかに思われたが、サマラに乗り移られてはいるというものの、息子によって男は殺されてしまう。
そしてサマラから逃れるためではあるが、息子は自分を殺すことまで要求する。それは最愛の人を自ら手にかけさせることで、母親にとって究極のことを要求していることになる。
極め付けに、サマラを突き放すことに成功した母親を、断がい絶壁から飛び下りさせる。
こう見ると、この映画は息子による命を賭けた母親試験だったようにも見えてくる。息子は凄まじい独占欲で他人を排除し、自分への母の愛を試したのだ。レイチェルは試験に合格して生き延びたのだった。
ということでこの映画はもの凄いマザコン映画なのだと思った。最後に2人が抱き合うシーンは、互いの生還を喜びあうのと同時に、別の意味にもとれ、感動的なシーンでありながらちょっと気持ち悪く感じた。主人公の子供が少女ではなく少年であることは必然的で、この映画は男の映画なのだと思った。
女のマザコンもいるんだがな。
# by 44gyu | 2005-06-05 22:53 | ★★★