文才のない人間の書いたほぼ映画の感想のみの日記


by 44gyu
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カテゴリ:★★★★( 30 )

世界大戦争

あらすじなど

1961年 東宝 特撮監督に円谷英二 主演がフランキー堺 乙羽信子や宝田明、笠智衆が出演。

普通につつましく暮す運転手一家。戦後の焼け野原に築いた幸せな家庭と、これから花開く未来だったが、ある日ぼっ発した第三次世界大戦によりあっけなく打ち砕かれてしまう。

すごい!こんなすごい日本映画が存在していたとは。日本の特撮といえば、ゴジラなどの怪獣ものしか思い当たらなかったが、これは世界に出しても見劣らないような、大掛かりでストーリーも特殊効果も大変よく出来た名作だ。
描かれる主人公家族や、貧しい母子家庭の話がまた泣かせる。ごくごく小さな幸せを大事にして暮している優しい人々が、問答無用で一瞬に消滅してしまう残酷さ。戦争の恐ろしさ愚かさがストレートに伝わる。この映画が作られたのが戦後16年と、まだ先の戦争の記憶が生々しかったのだろう、制作者の平和への願いと核の不安が切実だ。1960年代初頭から始まったベトナム戦争、1962年キューバ危機と、東西冷戦の緊張が高まっていた当時の第三次世界大戦の危機感の大きさが想像出来る。
リアルタイムでこの映画を観た人達はそりゃあ、怖かっただろうなあ。たぶん私も子供の時に観てたらトラウマになって何日間か一人で眠れなかっただろうな。

特撮も、最初の潜水艦が魚雷だかなんだか判らないような出来だったり、全体的に現代のものに比べるとチャチさを感じさせるものの、当時の水準を考えると、世界の水準で見てもとんでもなく頑張っているのでは。倒壊していく家や木々がとてもリアル。正に火の海となった東京の様子は大迫力。ストーリーがSFやファンタジーではなく、実際に起こりうる現実の恐怖を描いているため、造型も無理がなく今見ても新鮮。実写と特撮のバランスが自然に見える。

爆発しっぱなしでなく、笠智衆による静かであるが強い平和のメッセージで終わっているところも、この映画の良いところだ。誰かに対する憤りや怒りでなく、冷静に平和を維持しようというこの映画の意図が、最後に染み渡る。
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by 44gyu | 2005-04-13 23:40 | ★★★★

マタンゴ

あらすじなど

無人島に流れ着いた7人の若者達。霧に包まれたその島には、マタンゴという島独特のキノコが生えていた。

日本映画っぽくない印象を受けた。普遍的なキャラクターたちのせいだろうか。また原作があるからか充実したストーリーで、極限状態での人間心理が生々しく描かれ、ドラマとして良く出来上がっている。この映画が名作として度々名前が挙がるのも納得だ。
しかし怖いと評判のキノコの造型は、(私だけかもしれないが)今見るとかわいくも感じる。たぶんこのテの造型は教育番組などでさんざん「かわいいもの」として見慣れてきたせいだと思う。
現在公開中の「真夜中の弥次さん喜多さん」の「魂の宿」はマタンゴそのものだったんだなあ。

またマタンゴの登場人物にはモデルがいたとのこと。
詳しくは
ttp://home.interlink.or.jp/~5c33q4rw/nikki/2005z_03.htm
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by 44gyu | 2005-04-09 23:59 | ★★★★

アビエイタ−

公式サイト

正直、宣伝具合から全然と言って良いほど期待してなくて、話題性だけでなんとなく観にいったのだが、
これがすごく面白かった。
2時間49分という3時間近い長さなのに、映画の中に没頭して時間の長さを全く感じさせられなかった。

しかし試写会場から出る時、「お金払って観なくて良かった〜」という声を何度か聞いたから、好き嫌いがあるんだと思う。それもそのはずかも。
チラシのコピーでは「究極の飛行機と、世界一の映画、ハリウッド黄金期を駆け抜けた伝説の男のトゥルー・ストーリー」とあり、テレビCMでも「伝説の男」を全面に打ち出しているが、この映画は実は
一人の男がだんだん狂っていく様子を描いた映画
だ。
ハワード・ヒューズは強迫神経症だったそうで、この映画では最初から最後まで、彼のバイ菌や他人との接触への病的な恐れが執拗に描かれる。(ハワード・ヒューズと強迫神経症の詳細は以下[心の病-All About]
強迫神経症への理解や興味がなければ辛い内容なのかもしれない。ハリウッドのきらびやかな成功物語や彼の華麗な恋愛遍歴は、二の次の描かれ方なので、これらに期待して観に行くと、物足りなく感じるだろう。
大掛かりなセットと豪華な出演者に一見派手な物語の印象を受けるが、心の病を患ったハワード・ヒューズの痛みや精神的な戦いを描いた地味な映画だと思った。

主演のレオナルド・ディカプリオの熱演はなかなか好感が持てた。強迫神経症の進行具合だけでなく、病気がもたらす他人との距離の測り方など細かい部分も演じられ、ハワード・ヒューズの痛ましさを生々しく感じることが出来た。
またなんと言ってもアカデミー助演女優賞を受賞したケイト・ブランシェットがすばらしかった。凄すぎて鳥肌が立つくらい。「ギフト」を観た後「ロード・オブ・ザ・リング」や「エリザベス」を観た時も、あまりのキャラクターの違いに驚いたが、今回彼女が演じるキャサリン・ペプバーンは、また今までとは全然違うキャラクターなのだ。喋り方、笑い方、しぐさなどが凄く特徴的でまずびっくりする。そしてハワード・ヒューズと呼応する性格の描写も完璧で、彼女の女優としての素晴らしさをまた思い知った。
そんな名人芸とどうしても比べられ、格の違いが目立ってしまったケイト・ベッキンセール。物足りなさに腹が立つばかりだった。アクション女優として確立しちゃえば良いのに、と思った。
そして個人的に期待していたグウェン・ステファニー。やっぱりいつもの後ろの人達は引き立て役として効果を上げていたんだな、と思った。おもしろかったけど。

この映画はダウナー系だと思う。私はいつの間にかこの映画にどっぷり浸かり込んで観ていたので、席を立つ頃には気分は落ち込み鬱々とした状態になっていた。こんな気分になるハリウッド映画はそう無いだろう。
またハワード・ヒューズが心血を注いだ飛行機と華麗な映画の世界がとても悩ましく見え、ハリウッドらしい派手な世界と地味な心の描写がうまくまとまっていたと思う。
今回この映画はアカデミー賞の主要部門を取りそこねてしまったが、この暗さが嫌われてしまったのではないか。よくある達成感とかやさしさとか前向きなところが全く無いもんなあ。でもそこが良いところだと思うので、個人的には主要部門がとれなくてすごく残念。「Ray/レイ」も「ミリオンダラー・ベイビー」も観てないが、一般的にこの映画よりもすばらしいとされたのだから、さぞすばらしいんだろうなあ。でもヒラリー・スワンクかよ。。。。。
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by 44gyu | 2005-03-23 22:04 | ★★★★
公式サイト

先日の「ドラッグストアー・ガール」、ドラマ「タイガー&ドラゴン」が個人的に不発だった為、少々不安に思っていた本作だったが、不安は大外れ!かなーーり面白かった。これからも何度か繰り返し観たいと思う大当たりの映画だった。脚本だけでなく監督も兼ねるとなれば、やっぱり力の入れ方が違うのかな。

弥次さんと喜多さんのカップルはどちらかと言えばやおい的かと思った。激しいキスシーンもあるが、キャーと言いながら指の隙間から見ちゃう感じ(分かりにくいか)。
長瀬智也のやや一本調子の大根ぎみな演技を、中村七之助がうまくカバーしていた印象。「ラストサムライ」で観たときは分からなかったが、七之助の演技はとても良かったし、おまけに歌も上手かった。もったいないので早く復帰してほしいと思った。(事件)

ストーリーもかなりヤバくて素敵なのだが、この映画のおもしろさは個性的な俳優陣に拠っているているところが大きい。阿部サダヲ、板尾創路、竹内力、荒川良々などなど、一人でも十分何か出来る強力な個性の持ち主たちが、期待を裏切らないパフォーマンス(?)を見せてくれる。特に荒川良々ファン(私か)にとっては、良々地獄(天国)のような映像もあってうれしい。さきほど大河ドラマ「義経」で大いに感じた不満も、ここで解消されること間違いなし。
また個人的に思いのほかヒットだったのが、山口智充(ぐっさん)と七之助の父・中村勘九郎だった。特に勘九郎は目からウロコ。彼の登場シーンはかなりびっくりした。アーサー王って、アーサー王って。。。
そしてそして、なんといっても松尾スズキの「ヒゲのおいらん」。劇中のPVが4月1日にDVD発売されるが、待ち遠しい。でもDVDを手に入れたらきっと何度も観てしまうと思うので、映画を観た時のインパクトを大事にするためにも、映画を観るまでは手に入れない方が良いだろう。

そんな個性的で強力な脇道話とキャラが満載にも関わらず、本筋である弥次さん喜多さんカップルのストーリーもしっかり印象付けて進めていくところは、脚本家の力量なのだろう。喜多さんがヤク中という設定なだけにかなり幻想的で、話も行ったり来たりするのだが、分かりやすくまとまっている。

個人的にほぼ満点の映画なのだが、難を言えばそういった分かりやすいストーリーは、逆にもうちょっとぼかした作りでも良かったのではないかと思った。原作のトリップ感が薄まってしまったのはちょっと残念に思った。説明されすぎて想像する広がりが無くなってしまったように思う。そういうところはやはりテレビドラマ的なのかなと思った。
映像的な美しさやスキの無い完璧さでも、どうしても比べて観てしまうのだが、去年の「下妻物語」よりかなり劣っているように思えた。

しかし、盛り沢山のおもしろさ、贅沢さで今のところこの映画に並ぶものはそうない。宮藤官九郎のサービス精神をつくづく感じた映画だった。
そんなにしてくれてありがとう。
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by 44gyu | 2005-03-12 18:04 | ★★★★

プルート・ナッシュ

あらすじなど

2003年ラジー賞5部門ノミネート(受賞はなし)と、世間の評判は悪かったようだが、なかなか楽しいSFコメディ。ロザリオ・ド−ソン、ミゲル・ヌネズ・Jr.、パム・グリアと、個人的に好きな俳優が出演しているのもうれしい。
エディー・マ−フィーは、昔あんまり好きではなかったのだが、最近はお気に入りになりつつある。今回の彼は、アクションシーンでの活躍があるものの、押さえぎみで「つっこみ」役に徹しているのが良かった。テンポが良く、間も絶妙。
イントロのいかにも金のかかったSFコメディらしい音楽が、また素敵。

一番の見どころは、やっぱり近未来のロボット達。ここでは「アイ、ロボット」「A.I.」のようなシリアスさはかけらもなく、時に殺伐とした使命を帯びていながらもほのぼのしている。
主人公の友達兼ボディーガードの旧式ロボット・ブルーノは、エド・ウッドの「怪物の花嫁」でト−・ジョンソン演じる「ロボ」っぽい見た目とトロさと間抜けさがおもしろかった。
ブルーノより新型のセクシーなメイドロボットもかわいらしい。「うーぷす!」と言いながらいちいち床に落とした物を拾いパンチラさせる、という設定をしてある、ということなのだが、それが何度も何度もしつこくてハマる。たしかにずっと見ていたい。。
高級車の運転手ロボットの口うるささも懐かしい感じ。主人公らが適当にあしらうのもおもしろい。

そういえば、こういう愛嬌ある友達ロボットって久々に観たような気がする。
この映画には、クローンも頻繁に出てくるが、たいていの映画がそうであるような、深刻なメッセージは発していない。最後に、悪さをしたクローンは罰せられるが、その後も普通のクローン達は普通に生活を続ける。
しかしクローンもオリジナルの人間も、ほとんどの人がロボットちっくであるところが密かな毒だったりするのかなあと思った。あと通行人の中にもどこにも子供の姿がなかったりするところとか。

その他、プルート・ナッシュ、敵役のレックス・クレーターの名前の意味など、なかなか興味深い。それらについてはプルート・ナッシュ@映画の森てんこ森に詳しい。
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by 44gyu | 2005-03-04 22:51 | ★★★★

エメラルド・カウボーイ

公式サイト
パンフレット、チラシ、ポスターがかっこいい。ロゴと2丁拳銃のマークが素敵。

南米コロンビアでエメラルド王と呼ばれる日本人・早田英志のアクション・ドキュメンタリー。
製作総指揮、監督、脚本、主演を早田氏本人が担当した、正に究極のオレ映画!

制作費4億円も早田氏がロスの豪邸を売って充てたという。
一般的な日本の映画制作費は2〜3億円だそうで、「CASSHERN」の制作費が6億円(左の数字は実質制作費で実際額10億円ともいうらしい)らしいから、自主制作映画としてはケタ違い。

コロンビアといえば、ジョニー・デップ主演の「ブロウ」などの映画で度々題材になるよう、コカインの印象が強い。「ブロウ」の中で「この国では命が安いんだよ」みたいなセリフもあって、実際治安は最悪。ゲリラによるテロ、誘拐が頻発している。誘拐に関しては、世界の誘拐事件の半分がコロンビアで起きているそうだ。参考
そんな危険な国の中でも特に危険な地帯であるエメラルド鉱山で、この映画は撮影されたらしい。早田氏自身もゲリラの標的となりやすい人物なため、ゲリラを刺激しないよう映画の中でいろいろ対策が練られているのが、日本ではありえない話(街宣車対策とかはあるかもしれないけど)で興味深い。

しかしやっぱりラテン系。なんだかんだ言って楽しい映画だった。
個人的には「ムトゥ 踊るマハラジャ」を観た時のような衝撃を受けた。この映画では歌ったり踊ったりはないが、たぶんテンションが同じなのだ。
映画素人が作っただけあって、第一声から棒読みで始まる。出演者のほとんどが本人による本人役となっているので、役者は演技素人ばかり。棒読みにぎこちない演技が全編を占める(銃弾に倒れるシーンなどかなり斬新な倒れ方!)。しかしそれがちっとも見苦しくない。稚拙で土臭い演技や演出がかえって独特の雰囲気をかもし出し、画面から早田氏の溢れんばかりのバイタリティが漂ってくる。
でも一番漂ってくるのは「自分最高」感。とにかく映画内の早田氏はかっこいいのだ。ときに自家用ヘリから、ときにRV車から、護衛の者達を大勢従えてさっそうと降り立つ姿が、これでもかというくらいカッコいいカメラ使いで映される。
そして映画が始まって数分後、「25年前を思い出す…」という早田氏の言葉で入る回想シーン。いきなりジョニー・デップとレオナルド・デカプリオを足したようなハンサムなコロンビア人青年が出てくる。どうやらこのハンサムが若き日の早田氏役のようで、橋田寿賀子がかつて自伝ドラマで自分役の女優のキャスティングについて色々言われていたが、そこで同じようなことを思った(若き日の早田氏の写真がパンフレットに載っているが、確かにかっこいい。かっこいいけど、どちらかと言えばチャールズ・ブロンソン似かと思う)。
また、「ハヤタはいい人!」「ハヤタこそサムライ!」「ハヤタは正しい!」「かっこいい!」(←うろ覚え)などという早田氏を讃えるセリフがバシバシ出てくるが、自分で脚本を書いてらっしゃるのをふまえて見ると、ちょっとこそばいい。
インド映画の「ムトゥ〜」に似てると思ったのは、そんな風にみんなが持ち上げ、またどんな時も恐れを知らず悪漢に立ち向かい、従業員や顧客を守ろうとする、という完璧なヒーローぶりにもよるようだ。
何度も書くけど、そんなヒーロー・自分の物語を早田氏は自分で書いてる。

そんな自画自賛がイヤな人もいるかもしれないが、私は大好き。実際に大変な苦労をして成り上がった自負があるのだろう。

また、この映画は銃が全部本物というところも見どころ。実弾を発砲しているのも4、5発あるらしい。というのも、非常に治安が悪い地域での撮影になるため、自衛も兼ねているからだそうだ。また、コロンビアでは映画用のフェイクの銃が本物よりも高価だから、ということもあるそうだ。

映画を観た後で、公式サイトの予告ムービーを観た。
全然あんなんじゃない。
かなりアクが強いキワものだ。個人的に大きな掘り出し物だった。
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by 44gyu | 2005-02-28 23:37 | ★★★★

ドッグヴィル

公式サイト

ネタバレ

殺風景なセットの町から場面は移ることなく、描いているのは重い人間模様のみで、しかも3時間の長篇。一見退屈そうだがかなりおもしろく見られた。舞台風のセットとチャプターの切れ方も、映画ならではの映像と編集で、映画として違和感なく、斬新な効果になっていた。

アメリカ批判の映画だそうだが、まずドッグヴィル(犬の町)の普遍性に衝撃を受けた。
ドッグヴィルは日本の学校や小さな集落とも重なって見える。壁がなく家の中が丸見えのセットは、互いを知り尽くしたご近所が連なる田舎の集落を、うまくあらわしているように思えた。大声を出すとすぐ周囲に丸聞こえなので、皆ボソボソしゃべる。
外れればそこに住めなくなるため一人も輪を外れた行動ができず、よそ者を受け入れることは輪を外れることになるので受け入れない。その窮屈さは学校の教室のようだった。互いを牽制しあい変化を受け付けない集団の中には、気心の知れた安らかさはあるが、ある程度愚昧であるか愚昧にならなければやっていけないところもある。そんなもどかしい辛さを観ていて感じた。また、グレースに首枷をかけつつ体をいたわるようなおぞましい偽善性も、そこまで酷くはないが日常にありえる光景だ。
見た目はお芝居だが、表現されている社会は気持ち悪いくらいリアルだった。

グレースが住人達に受ける虐待が酷くなっていく描写は、観るに耐えられなくなるほど残酷。辛過ぎるので、救いを求めてこうなれば良いなあと思っていたラストに実際なった時は、読みが当たったと思うよりもホッとした。スカッとした。でも本当はグレースは死なねばならなかったのかもしれない。なぜなら最後のグレースとグレース父との会話は、神の子キリストと神の会話だと思えたから。グレースはたびたびキリストの姿と重なる。
グレースが受けた仕打ちに対して、自分の部下達を使って報復するように勧めるギャングの父が言う。
父「お前は彼等に同情するから裁きが下せん ”貧しい子供時代”とか”殺人は必ずしも殺人ではない”とか理屈をコネる。”責めるべきは環境だ”と。人殺しも強姦魔もお前の説では被害者だ。だが私にとって奴等”犬”がゲロを喰わんようにするにはムチしかない」
このセリフは世界の流れに反して死刑制度を続ける(日本もそうだが)アメリカの言い分を揶揄しているようにも聞こえるが、人間の創造主で、人間を罰するために町を焼き払い皆殺しを行うような、強権を行使する恐ろしい神の言い分のようにも聞こえる。
そしてグレースは、住人を犬呼ばわりする父の言葉を訂正することなく、同様に人々を犬と呼び言葉を続ける。
「犬は本能に従ってるだけ、なぜ許してやれないの?」
無垢で優しい言葉のように聴こえるが、下等な者に対する上位の者の哀れみである。処刑の際に「父よ、彼らをおゆるしください。自分が何をしているのか知らないのです。」と言ったキリストと重なる。
グレースは父のごう慢さに怒って家出したと言いながら、そんな自分のごう慢さにはまったく気付かず、彼等を許し、さらに慈愛を与えると言う。ここで彼等を許していれば、グレースはキリストそのものだったが、そうではないところに映画性があったと思う。月明かりが村人の顔を照らし、醜さをあらわにするや、グレースは、彼らと同じ、厳しい環境で生きる立場に立てば、自分も同じようにするだろうと思っていた考えが変わる。考えが変わったグレースの表情が一瞬にして冷徹になる様子は気持ち良いほど象徴的だ。
それからのグレースの報復は、その時はスカッとするが、後で考えてみればやりすぎだ。親の目の前で次々子供を殺すなど残酷の極みである。そこまでする必要ななかった。そこがグレースがアメリカの比喩たるゆえんなのかもしれない。権力者グレースにとって、許すも殺すも胸三寸。グレースの強大な権力の前に住人は逆らうすべもない。

キリストとグレースが重なるのは、最近の宗教右派が台頭するアメリカを表したからだろう。
保守化するアメリカでは、個人よりも全体が重んじられ、よそ者や少数意見を排斥する傾向が今後ますます強くなっていくと思われる。アメリカのポチである日本にも同様の傾向が顕著に現れており、世の中の鬱屈感は増すばかりだ。
本来人は善だったのではなく、グレースは隠されていた人間の残忍さを引き出したにすぎない。ドッグヴィルの絶望的な醜悪さはいつまでも印象に残り、救いようのない私達の世界の現実を見せつけられ、暗たんたる気持ちになる。それをスカッとさせる悪人皆殺しも、権力を持った者のごう慢だったことが明らかになり、自分の中の危うい人間性に気付かされた。

あ〜〜〜それでも生きてるんだから、良いトコだってあるよね?良いトコがあると信じてないと、とてもじゃないが生きていけないと痛感した。全否定されて落ち込んでしまい、他の映画に救いを求めたくなった。
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by 44gyu | 2005-02-27 23:05 | ★★★★

ドリームキャッチャー

あらすじなど

スティーヴン・キングの同名ベストセラー小説を映画化したサスペンス・ホラー。

この映画は世間の評判がすこぶる悪いのだが、私好みで大満足だった。
スティーヴン・キング原作を映画化したホラーは、今まで個人的にあまりパッとしてないと思っていたのだが、これはヤケクソじみた感じが逆にとても良かった。

以下ネタバレ。かも

公開時コピーが「夢の番人、ドリームキャッチャー いま、ひとつの悪夢が、その網をくぐり抜けてしまった。」らしいが、これでは「ヒューマンキャッチャー(ジーパーズ・クリーパーズ)」のような言い伝え系モンスターが地味に活躍する話かと思ってしまう(邦題だけど題名似てる。そういえば「ジーパーズ・クリーパーズ」と同じようなシーンもあった)。
ところがフタを開けてみると、ドリームキャッチャーそのものは全くストーリーに関係なく、グロテスクなエイリアンがグロテスクに地球を侵略する、というハデハデ映画。前半のストーリーは比較的シリアスに進行するが、後半からあれよあれよと言う間に何でもアリの壊れたアホ映画になっていく。たぶんわざとだと思うが、アホになったのに見た目はシリアスなままなのがよりいっそうおもしろかった。良く見ると変なセリフやシーンも変なまま突っ走って行くところは気持ち良いくらい。
「インデペンデンス・デイ」ほど規模は大きくないものの、同様のバカバカしさ満載。キャベツ頭ならぬ山芋頭のエイリアンやミミズの化け物のようなチビエイリアン(卵を産んでたから山芋頭の子供というわけではないようだが。。謎の存在)が、明るい場所で、しかもけっこうな頻度で見られるのもうれしい。モーガン・フリーマン率いるエイリアン専門部隊の空からの攻撃に、山芋頭がすごいスピードで走り回る場面など、あまりに素晴らしくってスローで見直した。

またアメリカ産ホラーでお馴染みの、不道徳な人間が殺されるという決まりを無理矢理守ってるように思えるのもおかしかった。主人公等幼馴染み4人組のうち2人が殺されるのだが、一人はアル中(これはまあ分かるが)、もう一人はつまようじ依存症??床に落ちたつまようじをどうしても拾いたくてスキを作ってしまうのだった。もう理解不能の理由だ。残りの気持ち悪いくらいほんとにイイ人2人は生き残る。

しかしこの映画は始終下品!まあ、そこが良いところでもあるんだけど。
寄生したは良いが成虫になって肛門破って出てくるってどうなんだ。死んでるんだけどお尻に穴が開いており、後ろ姿になんだか愛嬌がある。出てきたチビエイリアンの色形はウ○コそっくりだし。さらにいじめでウ○コ食べさせようとしたり、雪の上にオ○ッコで名前書いたりと執拗に排泄物を出してくる。エイリアンに汚染された(?)場所は、ゲロをぶちまけたみたいになっている。そういえば、4人の間で秘密の暗号のように使われている「S.S.D.D」という言葉は「日は違っても同じクソ」という意味だが、チビエイリアンの色形といい、肛門から出てくるところといい、「いつもと違うクソ」が出てきたってことだろうか。くだらなくて良いなあ。

そういった端々に見られる制作者のこだわりが共感できておもしろかった。
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by 44gyu | 2005-02-23 23:56 | ★★★★

あしがらさん

公式サイト

撮影開始時(たしか)67歳の路上生活者「あしがらさん」を3年に渡って追った自主制作ドキュメンタリー。

ひとりの老人とひとりの若者の物語としても十分見ごたえがあった。ドキュメントといっても、あしがらさんが入院したり、福祉施設からいなくなったりとハプニングが次から次へと起こり、けっこうハラハラどきどきのドラマが繰り広げられる。3年間に渡って撮影されただけあって、色んな出来事が凝縮されており、内容が濃い。

私がこの映画を観たのは市民団体が主催の上映会で、公式HPの予告編も、編集の仕方に何か思惑がありそうな感じだし、実際観るまではちょっとちゅうちょしてしまいそうなところが正直あった。
しかし実際観てみると、笑いあり涙ありで普通におもしろかった。なによりあしがらさんをはじめ、出演者達の個性が良く映し出されていて、考えさせる部分も多くあるが、全体的にほのぼのしているところが良かった。あしがらさんのぼくとつな一言一言が、いちいちおもしろくって笑わせられ、たまにホロっとさせられたりする。また周りの人々がみんな優しくて親切なのも、まだまだいい人はいっぱいいるのだと思えてうれしかった。
また優しいヒューマンドラマとしてだけだなく、あしがらさんを追うことで映される、路上生活者の病気や生活の実体、行政や民間によるホームレス支援の様子など、現実的な部分の映像も興味深かった。

説明臭かったりおしつけがましかったりせず、監督の「好奇心から撮りはじめた」という言葉通り、ひとりの老人とカメラを回す20代の青年とのやりとりがただただ追われている。一方向に導くような作りではないので、観る人によって様々な違う感想が引き出せるのではないかと思う。

私は、たしかに彼等の見方が今までとは変わり、怖くてやっかいな存在だけではないことが分かったが、実際に彼等と向き合う時の難しさや困難も考えさせられた。優しい気持ちにはなれたが、優しさや同情だけでは共存できないともつくづく思った。
自分のためにも彼等のためにも、これからより良くなるように考えていかなければならないだろう。この映画でそういうきっかけが持てて良かったと思う。
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by 44gyu | 2005-02-19 23:49 | ★★★★

スキャンダル

公式サイト

18世紀末、李朝末期の朝鮮。放蕩者の主人公と女達の物語。

韓流好きからは不評のようだが、韓流が苦手な私には大変満足な映画だった。
ミーハー気分で観たのだが、韓国映画で苦手な大泣き(カンヌ受賞の「オールド・ボーイ」も例外でなかった)、ドタバタ、ワンレングスのヒロインが一切なし。ストーリーも画面も洗練されていて美しく、感情を押さえた演技がさらっとしていて気持ちよかった。

なんといっても一番の見どころは画面の美しさだろう。
衣装は韓国の有名ファッションデザイナーによるものらしいが、落ち着いて上品な色会わせのチマ・チョゴリや小物が美しくかわいらしい。また女性達の髪型も必見だ。18世紀というのはフランスの高く盛り上げ、過剰に装飾した奇抜なヘアスタイルをはじめ、日本の花魁のものもだんだん大きくなってくる頃だ。この映画の女性達の髪型も、異様に大きく豪華で美しい。大きく結って飾っていないヒロインの髪型も、カンザシのワンポイントが洗練されていて素敵だ。
また成熟した韓国王朝文化の様式美の表現も興味深い。化粧をする時の化粧道具や手順、手紙を書く時の硯を摺る所作、食事の風景などだ。ふすまや掛け軸、刺繍の図柄の美しさも目を引く。ゆったりとして時に退廃的にも見えるのがとても優雅だ。
冒頭で主人公が描いている春画は、公式サイトでよく見たらけっこう稚拙だったが、素朴な色合いと柔らかいタッチが綺麗だ。
何気ない背景である自然にも気を抜いていない。窓から見える緑は目が覚めるような緑で、無彩色と茶色の建物と良いコントラストになっている。池や森の中のシーンでも、衣装の鮮やかさを引き立てるように緑一色か、くすんだ色におさえてあって、とても気を使ってあるのを感じる。

一番良かったシーンは、色々あるがやっぱりヒロインの最後のシーンだ。そこだけ観ても泣けてくる。大泣きされるよりもずーーーっとヒロインの痛みが理解できるし、雪原の白さとシーンの潔さが相まって目にも心にも突き刺さるものがあった。

しかし、登場人物達の細かな心理描写がちゃんと描けていればもっと良かったなと思った。主人公がヒロインに次第に引かれていく様子や、主人公の従姉妹が嫉妬している様子がいまいち分かりづらかった。そこは結構物語として重要なとこだったかもしれない。

そんなわけで、この映画はただぼーーーっと観ていても十分楽しめるし、ストーリーを追ってもくどくない悲恋に感動できる。
話題だったヨン様も、完璧な美男子ではなく、顔が良いだけで人でなしの最低男を演じているところもおもしろかった。去年からイメージチェンジを図っているらしいが、特にヨン様ファンでない私も腿毛が見えたのはちょっとショックだったくらいだ。正直ヨン様は松尾スズキに見えたし、これからも色んな役に挑戦してもらいたい。
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by 44gyu | 2005-02-08 22:03 | ★★★★